――来世が確認されました。
――来世の存在が確認されました。
世間にニュースが流れたのは何百年前だったろう。
あなたが死んで、その魂は、次の命になることがわかりました。
そういわれると不思議なもので今の人生に対する執着が薄れるものだ。
どうも今生は無理そうなので来世にかけてみようと思います。さようなら。
そういって自らの命を絶つ者が増えた、爆発的にだ。
憎むべきAさんを殺してもその人には来世があります。もちろんあなたにも。
そう考えると物事が割とどうでもよくなる。虚無感と言うのだろうか?
どうせ次がある。それは人の意思を薄弱とさせた。
もちろん来世になっても意識を引き継いだりはしない。
今までもそうだったように、今も、これからもそうだろう。
――そんな中、自分は前世を意識できるようになった。
それはこの魂がいくつめの生命になった時からだったろうか。
前世を意識できるようになったころから今は数えて12回目。
死んでからすぐに次の人生が始まることもあれば十年くらい時間が空くときもあった。
でもことごとく自分の魂は、新しい身体に宿った。
人生は順風満帆だったが病気で死ぬこともあった。
逆にハンディキャップを持っていたのですぐに命を絶ったことも。
生まれた場所が内戦地帯でよちよち歩きすらできないときに爆弾で吹き飛んだことも。
なんにせよ難しいものでなかなか完璧な人生にはなれなかった。
今生もどうも難しそうだ。
そして自分はベットに寝転がる。
終わりを迎えたい人間に向けたサービス。ここは苦痛なくその命を終わらせる。
そんな特殊な場所も現代には存在する。
もちろん表向きは禁止をする国ばかりだが需要があれば供給される世の中だ。何度命を迎えてもこの手のものは存在した。
支払いはどこも体だった。
魂の抜けた、もしくは次の体に旅立った、その残りカス。
そんな体で支払うのだ。
魂の抜けた体の心臓を、肺を、肝臓を、腎臓を、膵臓を、小腸を、眼球を。
そういったものが欲しい人物に向けて売られるのだ。我々はその生産者といったところか。
例えば移植が必要なほどの病気なら、自分は来世に期待し今生とは素早くおさらばする。
でもそういったものに忌避を覚える人もいて、今だに人の器官は商品価値を保っていた。
そして自分の体もこの後、出荷されるんだろう。
――時間だ。
目をつむる。古代のファラオのミイラのように手を組んでみる。
――来世にかけてみようと思います。さようなら。
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目覚める。恐怖とともに。
意識できたのは、理解できたのは生まれて五年がたったころ。
これが13回目……いや、14回目だということに。
自分の13回目は簡単に言うのであれば人ではなかった。
名前はよくわからないが獣だ。
今ならわかるが獣は言葉を持たない。その世界認識は人のそれより単純なものになる。
たしかに獣の時にも前世を意識するような感覚はあった。だが獣の認識力では理解できなかった。
最後は弱肉強食、自分より強い獣に食われて死んだ。
そして14回目の命となった。
それを14回目で理解できた。
心にあったのは恐怖だった。
――当たり前のことだが、輪廻転生の先が人とは限らないのだ。
単に、今まで運が良く人だっただけなのだ。
そのことに気付く。
疑問が頭を支配する。
この魂とはなんなのだ!
自分は人間か!
この魂の始まりはなんだ!
そうした恐怖とともに自分は14の誕生日を迎えた。
解答は見つからなかったが、解決法は見つかった。
――時間だ。
目をつむる。古代のファラオのミイラのように手を組んでみる。
――いつかこの輪が途切れるのにかけてみようと思います。さようなら。